いまのきもち

中島みゆき( MIYUKI NAKAJIMA ) いまのきもち歌詞
1.あぶな坂

作詞:中島みゆき
作曲:中島みゆき

あぶな坂を越えたところに
あたしは住んでいる
坂を越えてくる人たちは
みんな けがをしてくる

橋をこわした おまえのせいと
口をそろえて なじるけど

遠いふるさとで 傷ついた言いわけに
坂を落ちてくるのが ここからは見える

今日もだれか 哀れな男が
坂をころげ落ちる
あたしは すぐ迎えにでかける
花束を抱いて

おまえがこんな やさしくすると
いつまでたっても 帰れない

遠いふるさとは おちぶれた男の名を
呼んでなどいないのが ここからは見える

今日も坂は だれかの痛みで
紅く染まっている
紅い花に魅かれて だれかが
今日も ころげ落ちる

おまえの服があんまり紅い
この目を くらませる

遠いかなたから あたしの黒い喪服を
目印にしてたのが ここからは見える


2.わかれうた

作詞:中島みゆき
作曲:中島みゆき

途に倒れて だれかの名を
呼び続けたことが ありますか
人ごとに言うほど たそがれは
優しい人好しじゃありません

別れの気分に 味を占めて
あなたは 私の戸を叩いた
私は別れを 忘れたくて
あなたの眼を見ずに 戸を開けた

別れはいつもついて来る 幸せの後ろをついて来る
それが私のクセなのか いつも目覚めれば独り

あなたは愁いを身につけて
うかれ街あたりで 名をあげる
眠れない私は つれづれに
わかれうた 今夜も 口ずさむ

だれが名付けたか 私には
別れうた唄いの 影がある
好きで別れ唄う 筈もない
他に知らないから 口ずさむ

恋の終わりは いつもいつも
立ち去る者だけが 美しい
残されて 戸惑う者たちは
追いかけて 焦がれて 泣き狂う

別れはいつもついて来る 幸せの後ろをついて来る
それが私のクセなのか いつも目覚めれば独り

あなたは愁いを身につけて
うかれ街あたりで 名をあげる
眠れない私は つれづれに
わかれうた 今夜も 口ずさむ


3.怜子

作詞:中島みゆき
作曲:中島みゆき

怜子 いい女になったね
惚れられると 女は
本当に変わるんだね
怜子 ひとりで街も歩けない
自信のない女だった
おまえが 嘘のよう

※ひとの不幸を 祈るようにだけは
なりたくないと願ってきたが
今夜 おまえの幸せぶりが
風に追われる 私の胸に痛すぎる※

怜子 みちがえるようになって
あいつにでも 本気で
惚れることがあるんだね
怜子 あいつは誰と居ても
淋しそうな男だった
おまえとならば あうんだね

(※くり返し)


4.信じ難いもの

作詞:中島みゆき
作曲:中島みゆき

十四や十五の 娘でもあるまいに
くり返す嘘が 何故みぬけないの
約束はいつも 成りゆきと知りながら
何故あいつだけを べつだと言えるの

信じ難いもの:愛の言葉 誘い言葉
信じ難いもの:寂しい夜の あたしの耳

嘘つきはどちら 逃げること戻ること
嘘つきはどちら 泣き虫忘れん坊
いくつになったら 大人になれるだろう
いくつになったら 人になれるだろう

信じ難いもの:愛の言葉 はやり言葉
信じ難いもの:寂しい夜の あたしの耳

信じ難いもの:愛の言葉 はやり言葉
信じ難いもの:寂しい夜の あたしの耳


5.この空を飛べたら

作詞:中島みゆき
作曲:中島みゆき

空を飛ぼうなんて 悲しい話を
いつまで考えているのさ
あの人が突然 戻ったらなんて
いつまで考えているのさ

暗い土の上に 叩きつけられても
こりもせずに空を見ている
凍るような声で 別れを言われても
こりもせずに信じてる 信じてる

ああ人は昔々鳥だったのかもしれないね
こんなにもこんなにも空が恋しい

飛べる筈のない空 みんなわかっていて
今日も走ってゆく 走ってく
戻る筈のない人 私わかっていて
今日も待っている 待っている

この空を飛べたら冷たいあの人も
やさしくなるような気がして
この空を飛べたら消えた何もかもが
帰ってくるようで 走るよ

ああ 人は 昔々 鳥だったのかもしれないね
こんなにも こんなにも 空が恋しい

ああ 人は 昔々 鳥だったのかもしれないね
こんなにも こんなにも 空が恋しい


6.あわせ鏡

作詞:中島みゆき
作曲:中島みゆき

グラスの中に自分の背中がふいに見える夜は
あわせ鏡を両手で砕く 夢が血を流す
なりたい夢となれる夢とが本当はちがうことくらい
わかってるから鏡みるとき芝居してるのよ
つくり笑いとつくり言葉であたいドレスを飾るのよ
袖のほつれたシャツは嫌なの あたい似合うから

鏡よ鏡 あたいは誰になれる
鏡よ鏡 壊れてしまう前に
つくり笑いとつくり言葉であたいドレスを飾るのよ
袖のほつれた シャツは嫌なの あたい似合うから

放っておいてと口に出すのは本当はこわいのよ
でもそう言えば誰か来るのをあたい知ってるの
明るい顔ができるまでには クスリたくさん必要よ
大丈夫よって言えるまでには お酒 必要よ

※鏡よ鏡 あたいは誰になれる
鏡よ鏡 壊れてしまう前に
明るい顔ができるまでには クスリたくさん必要よ
大丈夫よって言えるまでには お酒 必要よ※

(※くり返し)


7.歌姫

作詞:中島みゆき
作曲:中島みゆき

淋しいなんて 口に出したら
誰もみんな うとましくて逃げだしてゆく
淋しくなんかないと笑えば
淋しい荷物 肩の上でなお重くなる
せめてお前の歌を 安酒で飲みほせば
遠ざかる船のデッキに立つ自分が見える
歌姫 スカートの裾を
歌姫 潮風になげて
夢も哀しみも欲望も 歌い流してくれ

南へ帰る船に遅れた
やせた水夫 ハーモニカを 吹き鳴らしてる
砂にまみれた錆びた玩具に
やせた蝶々 密をさがし舞いおりている
握りこぶしの中にあるように見せた夢を
遠ざかる誰のために ふりかざせばいい
歌姫 スカートの裾を
歌姫 潮風になげて
夢も哀しみも欲望も 歌い流してくれ

男はいつも 嘘がうまいね
女よりも子供よりも 嘘がうまいね
女はいつも 嘘が好きだね
昨日よりも明日よりも 嘘が好きだね
せめておまえの歌を安酒で飲みほせば
遠ざかる船のデッキに たたずむ気がする
歌姫 スカートの裾を
歌姫 潮風になげて
夢も哀しみも欲望も 歌い流してくれ

握りこぶしの中にあるように見せた夢を
もう二年 もう十年 忘れすてるまで
歌姫 スカートの裾を
歌姫 潮風になげて
夢も哀しみも欲望も 歌い流してくれ


8.傾斜

作詞:中島みゆき
作曲:中島みゆき

傾斜10度の坂道を
腰の曲がった老婆が 少しずつのぼってゆく
紫色の風呂敷包みは
また少しまた少し 重くなったようだ
彼女の自慢だった足は
うすい草履の上で 横すべり横すべり
のぼれども のぼれども
どこへも着きはしない そんな気がしてくるようだ

冬から春へと坂を降り 夏から夜へと坂を降り
愛から冬へと人づたい
のぼりの傾斜は けわしくなるばかり

としをとるのはステキなことです そうじゃないですか
忘れっぽいのはステキなことです そうじゃないですか
悲しい記憶の数ばかり
飽和の量より増えたなら
忘れるよりほかないじゃありませんか

息が苦しいのは きっと彼女が
出がけにしめた帯がきつすぎたのだろう
息子が彼女に邪険にするのは
きっと彼女が女房に似ているからだろう
あの子にどれだけやさしくしたかと
思い出すほど あの子は他人でもない
みせつけがましいと言われて
抜きすぎた白髪の残りはあと少し

誰かの娘が坂を降り 誰かの女が坂を降り
愛から夜へと人づたい
のぼりの傾斜は けわしくなるばかり

としをとるのはステキなことです そうじゃないですか
忘れっぽいのはステキなことです そうじゃないですか
悲しい記憶の数ばかり
飽和の量より増えたなら
忘れるよりほかないじゃありませんか

冬から春へと坂を降り 夏から夜へと坂を降り
愛から冬へと人づたい
のぼりの傾斜は けわしくなるばかり

としをとるのはステキなことです そうじゃないですか
忘れっぽいのはステキなことです そうじゃないですか
悲しい記憶の数ばかり
飽和の量より増えたなら
忘れるよりほかないじゃありませんか


9.横恋慕

作詞:中島みゆき
作曲:中島みゆき

わるいけど そこで眠ってるひとを
起こしてほしいの 急いでるの
話があるの
夜更けでごめんね 泣いててごめんね
みじかい話よ すぐにすむわ
さよなら あなた

ねてるふりで 話は聞こえてるはずよ
ためしに彼女
耳から受話器を 遠ざけてみてよ
夜明けの前のバスで あなたの住む町へ
着くわと告げれば
おどろく あなたの背中 見える

うそです ごめんね じゃまして ごめんね
これっきりでよすわ 一度いうわ
好きです あなた

明日から私 真夜中の国へ
朝日が見えても 人がいても
さむい真夜中
終った恋なら なかったようなもの
止め金のとれた ブローチひとつ
捨てるしかない

長い髪を 三つ編みにしていた頃に
めぐり逢えればよかった
彼女より もう少し早く
たぶん だめね
それでも 時の流れさえ 見放す
私の思いを
伝えてから 消えたい

夜更けでごめんね 泣いててごめんね
これっきりでよすわ 一度いうわ
好きです あなた

長い髪を 三つ編みにしていた頃に
めぐり逢えればよかった
彼女より もう少し早く
たぶん だめね
それでも 時の流れさえ 見放す
私の思いを
伝えてから 消えたい

夜更けでごめんね 泣いててごめんね
これっきりでよすわ 一度いうわ
好きです あなた


10.この世に二人だけ

作詞:中島みゆき
作曲:中島みゆき

あなたの彼女が描いた絵の
載った本をみつけた
やわらかなパステルの色は
そのままにあなたの好みの色

あなたは教えてくれない
私もたずねたくはない
夕暮れの本屋は風まかせ
つらい名前のページをめくる

※二人だけ この世に残し
死に絶えてしまえばいいと
心ならずも願ってしまうけど
それでもあなたは 私を選ばない※

クラクションが怒鳴ってゆく
つまずいて私はころぶ
放り出された本を拾いよせ
私はひとり ひざをはらう

嫌いになどなれるはずない
あなたの愛した女(ひと)だもの
夕暮れの木枯しにあおられて
あなたと同じ苗字が 滲む

(※くり返し×2)


11.はじめまして

作詞:中島みゆき
作曲:中島みゆき

はじめまして 明日
はじめまして 明日
あんたと一度 つきあわせてよ

新しい服を着る 季節のように
今来た道を 忘れてしまう
枯れた枝 落とすように
悲しい人を 他人のように忘れてしまう
はじめまして 明日
はじめまして 明日
あんたと一度 つきあわせてよ

シカタナイ シカタナイ そんなことばを
覚えるために 生まれて来たの
少しだけ 少しだけ 私のことを
愛せる人もいると思いたい
はじめまして 明日
はじめまして 明日
あんたと一度 つきあわせてよ

はじめまして 明日
はじめまして 明日
あんたと一度 つきあわせてよ
はじめまして 明日
はじめまして 明日
あんたと一度 つきあわせてよ


12.どこにいても

作詞:中島みゆき
作曲:中島みゆき

どこにいても
あなたが急に通りかかる偶然を
胸のどこかで 気にかけているの
あなたがまさか 通るはずない
こんな時間 こんな場所
それはわかっているのに

追いかけるだとか 告げるだとか
伝えなければ 伝わらない
わかるけれど わかるけれど
迷惑と言われたら 終わりだもの

どこにいても
あなたが急に通りかかる偶然を
それは 気にかけているの

街をゆく人 みんな あなたに
似てるような気もするし
ひとつも似てないとも 思えるわ
聞こえる声 背中のほうで
あなたかもしれないから
荒れた爪 少し悔やむ

元気だと噂うれしかった
めげたと噂悲しかった
それだけでも それだけでも
迷惑と言われたら 終わりだけど

あなたが けしているはずのない
確かすぎる場所がある
泣けてくる わたしの部屋


13.土用波

作詞:中島みゆき
作曲:中島みゆき

昔の歌を聴きたくはない
あの日が二度と戻らないかぎり
なつかしい名前口ずさんでも
砂を崩して 土用波がゆく

愛の重さを疑いながら
愛に全てをさらわれてゆく

伝えそこねた言葉のように
雨をはらんで 土用波がゆく

あなたの髪から私の髪へと
流れ落ちる 土用波の音
溜息まじりの潮風を泳ぐ
折れたカイトに見覚えはないか

愛の重さを疑いながら
愛に全てをさらわれてゆく

あなたの髪から私の髪へと
流れ落ちる 土用波の音

流れゆけ流れてしまえ立ち停まる者たちよ
流れゆけ流れてしまえ根こそぎの土用波

愛の重さを疑いながら
愛に全てをさらわれてゆく

伝えそこねた言葉のように
雨をはらんで土用波がゆく